歩く歩く

本州最東端目指し

明け方ぼくは身支度を整えた


お気に入りの

シャツに

ジーンズに

ブーツを履いて

持ち物もいつもと同じ

腕時計に

ブレスレット

財布に

タバコを持って


始発の次の電車を目指して

扉を出た。


昨日まで降り続いた雨で

湿り気のある

肌寒い駅までの道

少し急いで歩いた

体はすぐにあったまってきた。


最寄りのJR駅に着くと

発車まで時間はそうなかった

ICカードをかざし

ぼくは電車に吸い込まれた。


電車の中は朝帰りの夜の蝶

明け方まで語り明かした赤い顔

黒く不健康そうなサラリーマン

元気いっぱいのガテン系

日曜の明け方の電車は

一つの人間図鑑

靴を見ればなおさらよくわかる

綺麗に磨かれた靴をはくおじいさん

真新しい靴に傷をつけた若い彼

折れそうなヒールの彼女

そうしているうちに電車は

東京駅にとまった。


地下へ地下へとぼくは歩いた

地下へ地下へ行けば行くほど

人は減る、でも人はいる

地下へ地下へみなどこかを目指し歩いてる

電車はそんな人たちを飲み込み

人間をどこかへ吐き出しに行く

ぼくも飲み込まれどこかに吐き出されに行く


いつの間にかに電車は

決して混むことなく千葉で

ぼくを吐き出した

それからぼくは流れるように

次の電車に食べられた。

それからぼくは寝てしまった。

目が覚めればそこは田舎

田舎にきていた。銚子は

そう思わせる、どこかなつかしく

どこか初めてな気分


銚子から外川へ

その電車は過去を

過去に鞭を打って動かす

動かされている老婆のようだった。

扉が動くたびに軋む音

スレ落ちる鉄くず

左右に強く売れる車体

粉っぽい匂い

老いた老体はぼくを静かに

最後まで連れってくれた


その駅は外川

本州最東端


ぼくはその足で長崎灯台を目指した

犬吠灯台じゃなく長崎灯台

道行くとこどころが

潮で朽ちている

ガードレールに街頭

そしてそれに抗う綺麗な自販機


防潮堤の重い鉄の扉の隙間を抜けて

道らしい道のない道を歩き

長崎灯台の足元へ

潮で洗われた石が

足元に無数に転がり

ぼくを歓迎しながらも

邪魔をする

曇り空に差し込む薄い光線

風に煽られ高く伸びる白波

そして大きくぼくを迎えてくれた

太平洋


ぼくはここに来たかった

ただただこれを見たかった。

この感動を胸にしまい

きた道を帰る帰る